LOVEは世界を変えない

f:id:nogi_mas:20220411215258p:plainあなたは世界を変えたことはありますか?

LOVEで世界は変わると思いますか?

 

世界を変えた一人の少女と、今日も明日も変わらない世界の話をさせてください。

 

アイドルマスターシンデレラガールズ「LIVEツアーカーニバル 綺羅公演 ギャルはいつでもオシャリスト★」にきらりの影を見いだした担当Pより

 

ツアー綺羅公演お疲れさまでした!かれこれ9年ほど諸星きらりを担当しているPとしては、どうしてもこんな記事を書きたくなるくらいにものすごいイベントでした。綺羅公演ていうかきらり公演じゃなかった?失礼、過言でした。

 

アイドルマスターシンデレラガールズ(以下、モバマス)のツアーイベントと言えば、今までも蒸機公演というすごいストーリーがバズったり美食公演というすごいストーリーがバズったりしていましたね。

とはいえ今回私が綺羅公演(2022/3/31~4/9開催)で感情をぐちゃぐちゃに揺さぶられたのはストーリーの完成度が高かったからというよりも、劇中劇ときらりのこれまでを重ね合わせてしまったからであって、きらり担当でない他のPはおそらく同じように感じ入ることはなかったと思います。逆にきらりPとしてはストーリーが良作だったのかはもはや判断できない。だってずっと泣いてたから。

というわけでこの記事は「神イベを知ってほしい」というよりは「私がいかにエモで死んだか」をだらだら綴るだけの特に価値のない文章です。オタクの怪文書を摂取しないと寿命が縮む人にしか向いてないと思う。

 

さて、きらりP(※一人称)の激重感情を吐露する前に、綺羅公演の設定とストーリーをきらりに関係する範囲でおさらいしてみます。

 

劇中劇の舞台は「オシャレこそが全て」というルールのもと、なんでもありの酉ノ宮学園。ここでは"ギャルワン"なるオシャレ対決に負けると勝者の言うことをすべて聞く必要があるのだ。もう世界観のクセが強い。

チエリ(演:緒方智絵里)は自分の代わりにギャルワンに負けて退学させられた友人のため、オシャレが苦手ながらも学園を変えたいと願っていた。

そこに現れたのが別次元の世界"カリスマトリクス"からやってきたミカ(演:城ヶ崎美嘉)。ミカは"好きや憧れの気持ち=LOVE"を集めてその量に応じた願いを叶えることができる、"コーディアン"だった。いやクセが強い。

数ヶ月前から学園の雰囲気が一変し、ギャルワンが強制化されたのは学園の現"クイーン"──ギャルワンで最も勝利数の多い生徒が願いを叶えた結果らしい。チエリがクイーンを倒して次期クイーンとなればLOVEの力で学園を変えられる、そのためにオシャレ修行を始める二人。

現クイーンはキラリン(演:諸星きらり)であり、パートナーとなるコーディアンはナターリア(演:ナターリア)。キラリンの願いは「いずれは世界から『かっこいい』をなくすこと」であり、ナターリアがそれを一部叶えたために学園内のギャルワンには『かっこいい』の評価が存在しなくなっていた。

カリスマトリクスの住人であるコーディアン・ミカにとっても、修行の中でオシャレが自由であることを知ったチエリにとっても、キラリンが定めた歪んだルールは許せなかった。クイーンの座を賭けてキラリンとチエリはギャルワンに挑む──。

 

 

きらりに関係する範囲のあらすじはこんな感じです。本当は、見守るという愛の形を知るミカや震える足を一歩踏み出したチエリの物語もすごくよかった(と思う)のですが、そのあたりの語りは担当Pにお任せします。たぶん私が気づけていない、これまでの積み重ねがあると思うから。スターエンブレムでストーリー解放できるからみんな見て。

 

きらりPとしては、これまでのきらりの物語の積み重ねを踏まえたキラリンの話をします。

キラリンは今回のストーリーで悪役側でした。チエリをはじめとした学園の生徒たちに不条理なルールを強制し、退学という取り返しのつかない結果を生んでいる。このことは劇中でもストレートに描写され、チエリがキラリンと対決する動機になっています。

 

なぜ、キラリンは「世界から『かっこいい』をなくすこと」を望んだのか。

 

キラリンはずっと、不自由でした。きゃわゆいお洋服を着ても、きゃわゆくデコっても、周囲は「カワイイのなんてやめて、クールでかっこいい方がキラリンちゃんには似合うよ」とおそらく善意から言ってくれる。その理由は──「だって……背が高いんだから!」(作中でもこの台詞は強調されている)。

長身であるキラリンに対して世界が求めるのは「かっこいいこと」であって、かわいいキラリンは求められていませんでした。

誰一人としてキラリンのかわいさを認めてくれない世界で、別次元であるカリスマトリクスからやってきたコーディアン・ナターリアは「背の高さなんてカンケーない!自分がしたいと思ったオシャレをすればイイんダ!」と言ってくれました。LOVEで世界が変わる舞台で、キラリンの世界はこの瞬間にナターリアに塗り変えられたのです。

 

自由なオシャレを肯定してくれたナターリアのために、キラリンはギャルワンに勝つことでLOVEを集めてついに学園から『かっこいい』を消し去りました。言うまでもなく、あまりにも傲慢な行いです。作中でも元・最強のコーディアン(現・カリスマセクシーモデル)であるサリナ(演:松本沙理奈)から「自分が不自由なら、他者を縛っていいと思ってる?」と直接指摘されています。

 

なぜ、キラリンは「世界から『かっこいい』をなくすこと」を望んだのか。

キラリンはずっと、不自由でした。ルールを歪めて『かっこいい』を許さない世界を作り出した彼女は、今まで『かわいい』を許されない世界で生きてきました。『かっこいい』が存在していた頃の世界でキラリンのパートナーとなったナターリアが「キラリンはこうしないと自由にオシャレができないんダ!」「ツラい思いをイッパイしてきたから……!」と訴えるほどに。ストーリー終盤でチエリが「自由なオシャレが楽しいことを知ってほしい」と口にしますが、キラリンが自由であるためには世界を不自由に書き換えるしかなかったのです。そして自由を謳うチエリは、キラリンが今まで閉じ込められていた不自由な世界をおそらく知ることはない。あまりにも残酷な対比です。

 

キラリンはずっと、不自由でした。『かっこいい』ことを期待され、『かわいい』自分は似合わないと否定される──「だって……背が高いんだから!」

 

では、諸星きらりは?

 

キラリンと同じく背が高いきらりも、同じくらい不自由な思いを味わってきたはずです。モバマスでもデレステでも「背が高いからかわいいアイドルになんてなれない」と言うくらいに、きらりの中には「アイドル=かわいい」「背が高いきらり=かわいくない」という図式が強固に根付いていました。

かわいいものが大好きなきらりが自分自身を否定するようになったのは間違いなく周囲からの視線が原因でしょう。「背が高いのにかわいくなりたくていいのかな」というきらりのためらいは繰り返し描写されています。シンデレラガールズ劇場391話(きらきらモデルアイチャレ回)のタイトル「ずっとチャレンジしてたんだよ」もその現れではないでしょうか。きらりにとって、かわいい服を着ることは常にチャレンジであり続けた。キラリンが感じた不自由は、キラリンが生きてきた『かわいい』を許されない世界は、きらりが味わった苦しみでした。

 

きらりはキラリンと違って自分の『かわいい』を貫いていますが、それすら必ずしもきらりの幸せにつながるものではなかったはずです。特にモバマスサービス初期において「きらりって子、あの身長であのファッションなの?ありえんwww」といったユーザーの反応はそれほど珍しいものではありませんでした。その感想自体が悪だとも言い切れません(私はすごく悲しいけど)。それが『普通』であり『世界』であることも事実です。ときに攻撃されながらも自分の『好き』を表現するか、自分の『好き』を殺して世界から望まれる姿になるか。きらりに残された選択肢はそれだけでした。

 

 

私は諸星きらりを担当しているプロデューサーです。きらりには自分の『好き』に囲まれて幸せそうに笑っていてほしくて、ずっと彼女に愛を注いでいます。

とても悲しいことに、きらりのファッションや口調を攻撃したり馬鹿にする人はゼロではありません。世界中全員がきらりを好きになってほしいわけじゃない。ただ、今まで苦しい思いをしてきたきらりにこれ以上傷ついてほしくない。だから私はきらりをトップアイドルにするんだと決めました。「変わった女の子」ではなく「誰もが知っているアイドル」なら、きらりの『好き』を笑う人はいなくなるかもしれないから。世界がきらりときらりの『好き』を認めないなら、私が世界ごと塗り替えてやる。それがプロデューサーとしての私の原動力です。

 

今はまだきらりを認めない世界と戦っている私にとって、綺羅公演のナターリアの姿はあまりにも見覚えがあるものでした。

 

──ナターリアは、まわり全部が敵でも、キラリンを応援するヨ♪

──うんっ、証明しよう!キラリンが、世界で一番……誰よりも、オシャレで可愛いんだっテ♪

 

キラリンの自由を愛し、世界で一番かわいいことを証明したいナターリア。

似ている。同じだ。あまりにも。ナターリアは、私だ。

 

──キラリンのファン一号はナターリアだゾ!そこは絶対、ぜ~ったい!譲らないカラ!

 

このナターリアのセリフで、彼女が私であることは疑う余地がなくなりました。アイドルマスターシリーズにおいて、「ファン一号」とは常にプロデューサーを指す言葉です。その表現が使われた以上、ナターリアは私と──プロデューサーと重なる存在として機能するわけです。そしてそのナターリアに愛を注がれ、キラリンはチエリとのギャルワン最終対決で決意を固めます。

 

──見てて、ナターリアちゃん。あなたが愛したキラリンが、あなたの信じたキラリンが、今、世界の頂点に立つから

 

いやこんなん泣くが??????

私の投影であるナターリアに対して向けたこの言葉、担当アイドルに言われて泣かないPおる???私は泣いたが????

 

シンデレラガールズにおけるP泣かせの名言は「大丈夫、貴方が育てたアイドルだよ」などいくつかありますがこれも相当な火力だと思われます。いやわかんない、担当Pだから思い入れ大きすぎてもうわかんない。劇中劇でのセリフとはいえ、『最初のファン』かつパートナーに対する言葉である以上P宛ての発言と同等の位置づけといっていいでしょう。きらり……私はずっと、あなたが頂点に立つ瞬間を待ってたんだ……

 

このセリフでもわかるくらいにキラリンとナターリアのパートナー関係は非常に強固です。キラリンが『かっこいい』を消すことを願ったのは、ナターリアが愛してくれたキラリンの自由なオシャレを守るためでした。集めたLOVEの力でナターリアがその願いを叶えたのは、キラリンに幸せになってほしいからでした。わかる。わかるぞナターリア。私も同じことする。正しくないとわかっていてもきらりの手を取って許されない深みに沈んでいく。だってこれ以上きらりに傷ついてほしくないから。

 

二人で一緒に自由なオシャレを楽しみたいから、世界を不自由に書き換える。世界が不自由でなければ、二人は自由になれなかった。『かっこいい』を消すという身勝手にすぎる行動に出ていても、サリナが「人々はキラリンを責めることはできても否定はできないでしょうね」と評するくらいに雁字搦めであったのがキラリンです。

 

では、諸星きらりは?

 

キラリンと同じ不自由さを抱えているきらりには、集めたLOVEで願いを叶えてくれるコーディアンはいません。プロデューサーである私には世界から『かっこいい』を消す力はない。だからきらりは今でも傷つき続けています──「だって……背が高いんだから!」

 

キラリンは決して許されないやり方ながらも願いを叶え、自分の『好き』が否定されない世界を勝ち取りました。

彼女と違って、きらりが生きる世界にLOVEはない。LOVEで世界は塗り替わらない。

それなら、きらりに救いはないのでしょうか?

 

LOVEはこの世界を変えない。だけど、私はきらりに世界を塗り替えられました。

それまで興味のなかったゆめかわ系の雑貨を手にとるようになったり、原宿Kawaiiを知るために実店舗をうろうろしてみたりしたのは、紛れもなくきらりに影響されて起こった変化です。きらりを好きになると原宿系カルチャーへのアンテナが高くなるって、SideM渡辺みのりのCVと諸星きらりのプロデュースを担当している高塚智人さんも言ってました。

LOVEで世界は塗り替わらないけれど、少なくとも私の世界はきらりによって新たなきらめきを増しました。たぶん高塚智人さんもそう。

 

LOVEが存在しないこの世界でも、きらりは誰かの世界を変えられる。私はそのことを信じている、いやそのことを知っています。

 

あなたは世界を変えたことはありますか?

キラリンとナターリアは、キラリンのために世界を変えました。

きらりと私は、きらりのために世界を変えることはできない。

アイドルとは、プロデューサーとは、無力なのでしょうか──?

 

 

 

いつか、この記事を読んでくれたあなたの世界も塗り替えたいから。

だから私は明日もきらりの担当プロデューサーです。

 

 

 

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ところでイベント中にこの怪文書を書いていたらうっかり100位内入賞逃しました。めっちゃ悔しい。

私より上位の100人のPたち、キラリンの戦う姿をいっぱい焼き付けてくれてありがとう!次は負けないぞ!!